労働問題は「労働問題の事例と解決法」の労働審判の実態

費用と審判の件数

労働問題において、被雇用者が雇用者たる企業側を相手に民事訴訟を起こすのは、とても容易ではありません。裁判にかかる費用も無視できないし、弁護士に依頼するとさらに費用はかさみます。特に不当解雇の被害者にとっては泣き寝入りするしかない状況が続いていました。それが、労働審判制度の導入によって、迅速に問題解決の道が拓けるようになったことは、大変望ましいことといえるでしょう。
気になるには労働審判にかかる費用面ですが、これは係争の金額によって異なります。弁護士費用は別として労働審判にかかる手数料は、係争の額が100万円なら5,000円、1,000万円なら25,000円となっており、これは庶民にとって高額ではない金額といってよいでしょう。労働審判制度がスタートした2006年は800件台だった審判の件数も年々増え続け、特に「派遣斬り」の嵐が吹き荒れた2009年には一気に3,400件を超える件数に増加しています。そして、労働審判制度が一般にも普及してきた2011年の件数は3,586件となっています。

適法な雇用体制のために

案件の約8割が民事訴訟まで至らずに審判官による調停で解決しているという現実を鑑みると、以前なら泣き寝入りしていた人々が審判制度によって救われたことは日本の労働環境における進歩的現象とみてよいでしょう。特に近年は企業の労働組合が弱体化しているといわれ、労働組合自体が存在しない企業も増えています。さらに企業内の雇用体制が、この20年間で大きく変化し、従業員における非正規雇用者の占める割合が急増してきています。
職場の労働条件に不満があっても周りに相談する人がなく、その方法も分からないという人々が多くいるのが現状です。そういう人々にとっては、この労働審判制度は心強い法制度であるといえるでしょう。労働審判を申し立てると、相手方である雇用者には審判の場に出席する義務が生じ、欠席すると罰金が課せられる上に、欠席しても審判は行われるので雇用者に不利な結果となることとなります。つまり労働審判制度は、雇用者に法律を遵守した適切な雇用体制を構築させるために無言のプレッシャーを与える制度だともいえるわけです。